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地域の課題解決を考える若者の才能が、 日本のレジリエンスを強固にする

2020/10/30 12:00

テレビ、ネット、雑誌、出版……。メディアの垣根をなくすことで情報発信力を高めてきたNewsPicks Studios CEO 佐々木紀彦氏と、JCI日本会頭 石田全史、同副会頭 竹田哲之助の鼎談が実現。日本のレジリエンスを高めるために何が必要か、語り合った。


竹田哲之助(以下竹田)2020年は新型コロナウイルスが猛威を振るった年として歴史に刻まれるでしょう。今、世界中の人々の暮らしが一変しています。それに追い打ちをかけるように気候変動による自然災害も世界各地で発生しています。日本も例外ではなく、コロナショックの最中、「令和27月豪雨」が九州、熊本を中心に日本各地に甚大な被害をもたらしました。10月には、北大西洋の海水温度の異常な高さから、巨大な台風が日本列島に上陸する恐れもあると予想されています。

私たち日本青年会議所(以下JCI日本)の事業、メンバーの社業も、今までは当たり前だった、「安全・安心」のなかで進めていくことが難しくなっていると痛感しています。そんな渦中だからこそ、持続可能な経済社会の形成が日本でも強く求められるようになったのでしょう。昨今、レジリエンスという言葉が非常によく聞かれるようになっています。


佐々木紀彦(以下佐々木)
:レジリエンスは幅広い分野で求められているので、その定義も様々です。気候変動やコロナショックからの復元力もそうですが、日本でレジリエンスという言葉が使われるようになった背景には、既存の社会システムがすでに通用しなくなったということも挙げられると思います。戦後、日本は様々な課題に直面しましたが、高度成長期の中では地域社会も含め、ほとんどの人が生活のレベルを落とすことはありませんでした。

なぜなら、縦割り型の行政、学歴社会、終身雇用と年功序列型の雇用形態、夫婦間の役割分担などがシステム化され、うまく機能していたからです。しかし、1990年代初めにバブルが崩壊し、平成に突入するとその画一的な日本モデルは瞬く間に崩れていきました。インターネットが発達し、グローバル化が進んでいくなかで、新たなテクノロジーを活用した社会システムを構築すべきだったのに、日本人の多くが消極的だったことにも問題があったと思っています。


石田全史(以下石田)
:私も、グローバル化の流れのなかで、科学的根拠に基づいたレジリエンスとは何かを真剣に考えなければならなくなってきていると感じています。


佐々木
:今回のコロナショックでもおわかりのように、どこかの国で起きた異変が瞬く間に世界中に広がっていきますよね。金融でいえば、リーマンショックは典型的でした。しかし、経営者や投資家、金融機関を除けば、当時、それを自分事として考えられる日本人は少なかった。何年かに一度は、何かしらの衝撃が来るということを私たち日本人は常に想定しておかなければなりません。


石田
:確かに今回のコロナショックでも、「日本は犠牲者だ」という考えに縛られ、ネガティビティに傾いている人は多いですよね。危機的な状況を受け入れることも必要です。日本の経済競争力は高いが、レジリエンスは先進国の中でかなり低いというデータがはじき出される理由もそのあたりにありそうです。


佐々木
:昭和の時代の成功の方程式があまりにも盤石だったので、レジリエンスについて考える必要がなかったとも言えそうです。誰かがつくった社会システムに上手に適応して生きたほうが幸福に過ごせるという時代があまりにも長く続きすぎたため、社会変動による衝撃への耐性が弱くなってしまった。多くの人がそれに気付いたことで、ようやくレジリエンスという言葉を自分事として考えられる人が増えてきたのではないでしょうか。

JCI日本副会頭 竹田哲之助


竹田
:確かに過去20年を振り返ると、アメリカではGAFAが台頭し、中国は目覚ましい経済発展を遂げました。日本も既存の社会システムを変えるチャンスは多々あったと思うのですが、意外と変化に対応できなかった。佐々木さんがおっしゃるように、今回のコロナショックで、日本も変わらなければいけないという意識をもった人が増えています。


佐々木
:例えば、ビジネスの世界ではDX(デジタル・トランスフォーメション)へのシフトが盛んに叫ばれ始めています。日本はどのような方法で成長し、危機を乗り越えていくべきかが問われているのです。国、地方公共団体、企業、ヒト、誰もが幸福を享受できる新たな社会システムの構築を目指す機運が急速に高まっていると感じます。それを全国民に知らしめた決定打が、新型コロナウイルスのパンデミックだったのではないでしょうか。


世界経済は「利己主義」から「利他主義」へ



石田
:今年、116日、7日にJCIが、横浜で「2020JCI世界会議横浜大会」を開催します。本来、この大会は世界中のJCIメンバーが訪れ、新型コロナのような世界規模の課題をどのように克服すべきか、闊達な議論が行われるはずでした。コロナ禍で世界中のメンバーが訪れることはできなくなりましたが、日本人のメンバーが集まれる環境だけは何とかつくりたいと思い、JCI日本主催で大会を支援する「JCIJAPANフォーラム」を同時開催することにしました。本フォーラムでは、「WORLD  CRISIS~新たな可能性~」と銘打ち、未曾有の危機を迎えている世界に対し、社会、国家、国際の観点から新たなビジョンを示し、企業、個人が目指すべき未来をメンバー一人ひとりに考えてもらいます。

一方で、日本独自の課題に対しても解決の手段を探り出さなければなりません。特に地域の企業がSDGsを推進する重要性はいっそう増しており、本フォーラムでは、企業のレジリエンスを高めるための「SDGs×ファイナンス」の観点から、金融機関が地域企業のSDGsの推進を支援することで生まれる未来の形を示していきます。昨年は大分の豊和銀行とSDGs私募債を開発し、今年は三井住友銀行とSDGs融資の策定に向けた連携を図り、SDGsを推進する地方企業を支援する仕組みを整えてきました。また、急速に変化する世界の資本主義について大局的観点から新たな可能性を読み解くために、「SDGs×次世代」というコンセプトのもと、未来を担う若者たちをゲストに呼び、今一度、SDGsの意義を考えたいと思っています。


竹田
:現在のコロナ禍でも、ひとつのキーワードとしてESG投資の加速を含めた、ファイナンスが注目されています。


佐々木
:フランスの経済学者で思想家のジャック・アタリさんは、数年前に未知のウイルスが世界経済に深刻なダメージを与えると予想しました。グローバル資本主義の盲点を突いたのです。早い段階からアタリさんは、世界経済は、「利己主義」から脱却し、「利他主義」にシフトすべきだと説いています。とにかく利益を生み出すのが企業としての「善」であるという考えを改め、地球の持続性、資源の共有、あるいは地域の発展を第一に考える企業がこれからの社会をリードすべきだと考えられているのです。個人的には、日本企業がプレゼンスを発揮できる、新たなビジネススキームだと思っています。


石田
:同感です。ビジネスを通して社会の課題を解決する。これは理想論ではありません。例えば、今スマートモビリティが注目されていますが、AIIoTを活用して、移動課題を解決することだけが目的ではありません。社会実装を推進・支援することで、行政や様々な産業を巻き込んで地域全体のレジリエンスを高めていくことが最上位の目標なのです。こうした発想が地域社会を強くします。そのためにもSDGsの概念をもっと社会全体に浸透させていくことが大事だと思っています。


佐々木
:身近なところから、課題解決の手段を考えてもいいと思います。多くのカフェやコンビニがプラスチックストローを紙ストローに変えました。ファッション業界も欧米の企業に学び、廃棄物の削減に努める3R(リデュース、リユース、リサイクル)の取り組みに力を注ぐようになっています。資源を考慮しながら、ビジネスを行う動きは日本でも広まってきているのです。消費者もサステナブルな商品に共感を示すようにマインドが変わってきています。日本企業には、例えばこの紙ストローを、海外から取り寄せようではなく、より便利でおしゃれな商品として開発・提案しようという発想に向かってほしいですね。

Text by Hiroshi Shinohara | Photographs by Shuji Goto