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地域格差をなくす!?『みんなのとしょかん』

2020/09/28 09:00

2011年の東日本大震災では、岩手県、宮城県、福島県の3県に約95万人の人々がボランティア活動に訪れた。一般財団法人みんなのとしょかんの代表を務める川端秀明氏(以下川端氏)もそのひとりである。
「2011年の震災時、イベント会社に勤めていたので、計画停電などもあり、イベントは中止、売り上げは激減でした。仕事もないので、何か出来ることはないかと、私一人で現地に物資を届けに行っていました。しかし、あまりにも被害が甚大過ぎて、個の力に限界を感じたときがありました。(川端氏)」
物資を買って行ってもすぐに底をつき、移動にもお金がかかる。ちょうどその時、被災者の方から、“本が読みたい”という声を聞き、本を買って行ったらとても喜ばれた。次訪れたときにも持っていくと、“いらない”と言われてしまった。というのも、避難所であったため、周りにはまだ家族が見つかっていない方も多くいる中、のうのうと本を読んでいられないということだった。また、捨てる場所も置く場所もない状況であった。そこで川端氏は本棚の設置を避難所の管理者に提案したところ、“誰が管理するのか?”と問われ、頭を悩ませた。
“どうしたら被災地で本を読む環境を整えられるか“考えた結果、図書館を作ることに。本の寄付は集めやすく、図書館であれば返却してくれる。資本が限られている中でも持続可能な方法を見出だした。
当時、川端氏は栃木県の足利青年会議所(以下JCI足利)に所属していたこともあり、全国各地の青年会議所メンバーが本を集めるのに協力してくれた。

東日本大震災から2年後の2013年、川端氏は公益社団法人 日本青年会議所主催の人間力大賞(現:JCI JAPAN TOYP)でグランプリ(東京商工会議所奨励賞)を受賞した。
「もともと人間力大賞は知っていました。まさか自分が応募するとは思っていませんでしたが、当時のJCI足利の理事長から薦められて応募することになりました。最初のプレゼンで審査員の方に“経済的に回るのか?”“どのように図書館を維持しているのか?”という質問を受けました。たしかに過疎地、被災地で持続可能な形にしていくことは課題でした。図書館は著作権法の関係で入館料を取れないので。このとき、社団法人から財団法人に変更しました。(川端氏)」
受賞後は、図書館に興味を持った方や、アメリカの学生など、視察に来てもらう回数も多くなり、講演依頼も増えたという。

現在、川端氏は図書館とは別に、美術館も始めている。地方には図書館も少ないが、美術館もほぼ皆無だ。そのような場所でもアートに触れてほしいと、各地の小学校で『1日美術館』を開催。また、地方にいるアーティストの発掘も同時に行っている。美術館には有名アーティストの作品も多く揃っており、地方でもクオリティの高い展示が出来ている。
「新型コロナウイルス感染拡大の時は、図書館、美術館ともに休館しておりましたが、いくつかの図書館は学習支援(塾)としてやっているところもありましたので、Zoomを活用しオンラインで学習支援を行っていました。美術館で行っていた絵画教室も、日本でも有名なアーティストさんから賛同していただき、オンラインで講師を務めていただきました。出来なくなったことはたくさんありましたが、コロナだからこそ、地域の子どもたちに体験をさせることが出来たのが良かったです。(川端氏)」

川端氏は栃木県出身だが、首都圏との経済格差などを常に感じていた。同じだけ頑張ってもカバーしきれないほどの差になっていく。“地方ももっと頑張れ!”ではなく、何が出来るのか、同じ土俵ではなく、個性でどう戦うかが重要だという。
「今、第一線で活躍しているアーティストは地方出身が多いです。その方たちは個性をもってステージを上がっていきました。どう個性を出していくか、個人が出ていくかが大事です。それと同時に演出する力も必要です。個性がある人、能力が高い人は多いですが、その人が外に出れるか、認められるかというと別の話です。そういう人たちのためにTOYPなどがあるのではないでしょうか。個が活躍するなら、組織は何をするのか。地方で頑張っている方がJCIやTOYPのような場所にいくことで、その人の頑張りは10倍にも100倍にもなります。それが組織の力だと思います。(川端氏)」

川端氏は圧倒的な行動力で歩みを進めてきた。各地で実施している図書館や美術館での質問やヒントを得ながら、常に動きを変えていく。現在、図書館はネパールやミャンマーなどの被災地のサポートとしても活動している。“動けば動いた分だけ結果が返ってくると分かった以上、動かないのはもったいない”を原動力として、今後も地域の子どもたちの成長に寄与していくだろう。


川端 秀明/Hideaki Kawabata
「みんなのとしょかん」プロジェクト代表
震災や自然災害などにより移住を余儀なくされコミュニティの再生が急務とされる地域や過疎化が進む地域に、コミュニティを醸成できる場所として、図書館を設置する活動を行っている。また、設置した図書館において、カルチャー教室なども開催し、地域での生きがいづくりや、技術習得のお手伝いなども行っている。

第27回人間力大賞(現:JCI JAPAN TOYP)グランプリ・東京商工会議所奨励賞受賞

JCI JAPAN TOYP2020 HP:https://www.jaycee.or.jp/toyp2020/

text by キャサリン