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その給料日は正しいか?〜給料日の法的根拠〜

2020/07/22 17:00

2020年7月22日は、給料日。

25日が土曜日にあたる今月は、このような扱いをしている企業も多いだろう。

しかし、この扱いはそもそも正しいのか。27日(月)払いではいけないのか。

弁護士 上田貴之氏(@東京都千代田区)に話を聞いた。

【給料日に法的根拠はあるのか】

まず、給料日をひと月の中のいつにするか?については、法的な規制はありません。

話題になっている25日払いのほか、月末払いや10日払い、15日払いあたりが多いように感じますが、このようにバラけるのは、給料日をひと月の中のいつにするか?について決まりがないためです。

他方、たしかに「毎月25日払い」とする企業も多いと思います。

これは、法律の根拠云々の話ではないのですが、給料を支払う側の事情によるものだろう、と言われています。




そもそも、給料は、簡単には支払えません。

毎月の勤務日数、勤務時間を集計し、場合によっては有給休暇や、このコロナ禍であればひょっとすると休業手当やテレワークを始めたことによる特別な手当て等も計算して、支給総額を計算する。

そこから社会保険料等の各種控除をして、控除後の支給額を計算する。

そのあと、決債権者の承認を得て、承認が得られたら、振込みをする。

その後、給与明細を発行する。賃金台帳等に記入する。税理士や社労士に報告する。

このような作業を、全従業員分行う。

個人事業主さんや創業者さん等、ご自分で給与を計算して支払う作業を経験したことがある方はお分かりと思いますが、結構な作業量ですし、ミスなくやろうとするとなかなか気を遣います。

さらに、事業体が大きくなればなるほど業務量が増えて、振込作業が一日では対応できないから振込予約にしてみたり、作業自体も数日かけて行ったりします。

その結果、多くの企事業体で見られるように、経理部(や総務部)が計算等する→役職者・代表者の承認→経理部や総務部が振込予約等と言った具合に分業するようになり、ミスを起こさないようチェックリストを作り、効率化を図るべくルーティン化しようとしていきます。

しかし、このルーティン化の際「月末払い」だと、一つ問題が生じます。

「月末」は、はっきりしないのです。

“にしむくさむらい”という言葉があるように「月末」は、月によって異なります。2月に至っては、4年に一度は29日になったりする始末です。

そのため、月末払いを前提にルーティン化しようとすると、例えば「給料日の●日前までに計算して決済に上げる。●日前までに振込予約をする。とすると■日には計算を終わららし、■日には振込予約しないと…」というようなスケジュールを組む際に、日付を毎月計算し直さないといけなくなる。これが、正直鬱陶しい。

そこで、毎月必ず来る25日払いにしたのではないか。

これが、“25日払い”が多い理由として、比較的強く言われている見解です。



【契約代金の27日払いが許されるときでも、給料は22日払いなのか?】

「給料日をひと月の中のいつにするかにつき、法的規制はない。それなら、今月は27日(月)に払ってもいいのでは?契約代金の支払いなどは、支払期限が土日祝日等の場合、その次の平日に払うことになることが多いし…」

冒頭のご質問にもあるように、このように思う方も、いらっしゃるかもしれません。

しかし、給料の場合、これは“微妙”となります。

まず、契約代金の支払等の期限が土日祝日等の場合、その次の平日、つまり、翌営業日に支払うことになることが多いのは、民間人同士を規律する代表的な法律である民法の決まりや裁判の前例に基づきます。

民法上、期間の末日が日曜日等所定の休日にあたるときは、その日に取引をしない慣習がある場合に限り、その翌日に期間が満了する(ごく簡単にいうと、翌日払うことになる)という決まり(民法142条)があり、これに関連して、返済期日を毎月●日と定めた場合にその●日が日曜日等にあたるときには、その翌日の営業日を返済期日とする合意があったと推認する、とする裁判の前例があります(最判平成11311日)。

このため、契約代金の場合、次の営業日に払えばよい、とされることがほとんどです。

しかし、給料の場合は、労働基準法等も気にしないといけません。

そして、労働基準法は、労働者の生活等の保護・安定のために、給料の支払いについて、原則をいくつか定めていて、この中の一つに「毎月一回以上一定期日払いの原則」というものがあります(労働基準法242項)。

読んで字のとおりの原則ですが、“毎月25日払い”の事業体にこれを単純に当てはめると「先月は25日に払ったけど、今月は25日が土曜だから27日に払う」とした場合に、“毎月1回払えていない”状態が起こりかねません。

そのため、前もって22日に払うのが無難(法的には、実は、27日でもいいだろう、というような見解もあります)。

このように考えられ、22日に払うことにしている、という団体が多いのだと思います。

 

実際に払う際には「法律だけでなく(企業は苦しいけれども)連休前に払った方が従業員の方が喜ぶし…」との判断で支払日を決めていらっしゃる方も多いと思いますが、時には日々の活動と法律の関係も考えてみていただけると、法律家としては嬉しいです。

弁護士上田貴之(JCI東京)
上田&パートナーズ法律事務所代表
https://www.up-law.jp/

text by 浜の責任者