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若者と保護犬の再出発を支援『NPO法人キドックス』

2020/08/24 09:00

茨城県土浦市にある『キドックスファーム』。
ここでは、不登校や引きこもりの青少年と保護犬の支援を同時に行っている。飼い主に捨てられた犬の心と身体のケア、家庭で暮らすためのトレーニングや、里親を探す活動などを、若者たちの社会参加活動の一環として行っている。
『キドックスファーム』を運営するNPO法人キドックスの代表を務める上山琴美氏(以下上山氏)に話を伺った。

【ドッグ・プログラムとの出会い】
上山氏は高校生の頃に飼っていた犬が亡くなり、“私は良い飼い主だったのか?もう少し何か出来ることがあったのではないか?”と犬について調べていた際、殺処分されている犬、動物がいることを知り、衝撃を受けた。動物のために何かしてあげたいとずっと考えていたという。
大学生になってからは、ボランティアで非行や引きこもりなど、様々な悩みを抱える青少年の支援活動に携わっていた。というのも、小・中学校で親しかった友人が非行に走る姿を見て、その頃から問題意識を持っていたからだった。

あるとき、アメリカにある刑務所で行われている、少年たちも犬も幸せになれる更生プログラム“プロジェクトプーチ”を知った。
“プロジェクトプーチ”とは、アメリカオレゴン州のプロジェクトプーチ社が行っている、少年院で犯罪を犯した少年が、一度飼い主に捨てられた犬を保護して、家庭で暮らせるように心身のケアとトレーニングを行って犬の新しい家庭(里親)を探す活動である。責任・忍耐・愛情の3つを主に学び、再犯を犯さないように更生を目的とした教育プログラムである。
「この更生プログラムであれば、悩みを抱える若者と捨て犬を救うことができる!と感動しました。これを日本にも取り入れたい!と今の仕事を目指すきっかけになりました。(上山氏)」
そして2012年9月にNPO法人キドックスを設立し、設立からわずか1年後、同社のメンバーでアメリカの少年院を訪問し、実際にプログラムを実施するにあたり、主軸となる考えや支援者の立ち位置、教育計画の組み方などを学んだ。
そして設立から5年、公益社団法人日本青年会議所主催の第31回人間力大賞(現:JCI JAPAN TOYP)で総務大臣奨励賞を受賞。認知度も上がり、メディアからの取材も増え、上山氏の活動は多くの方に知られるきっかけとなった。
保護犬の世話をする少年たち

【若者の自立と犬の譲渡を考える】
『キドックスファーム』には、支援機関からの紹介、チラシなどはもちろんだが、“動物ボランティア”をインターネットで検索して訪れる若者も多い。自分が今出来ることを探して辿り着いている。保護犬は茨城県笠間市にある動物指導センターや多頭飼育により増えてしまった犬たちを引き取っている。若者と犬が触れ合うことで、心や身体のケアを同時に行っており、過去には定期的に譲渡会も実施していた。しかし、譲渡会では不特定多数の方が来るということもあり、怖がりな仔などは普段の元気な様子を見てもらえず、なかなか譲渡に繋がらなかった。“このままでは犬の譲渡率が上がらない・・・”上山氏は2018年に4月に保護犬と出会えるカフェ『キドックスカフェ』をオープンすることにした。
「カフェでゆっくり触れ合っていただきその犬を理解したうえで譲渡する方が里親様にとっても安心です。若者においても、シェルターでの人間関係や作業内容に慣れたら、次のステップとしてカフェのお客様(知らない方)と話すことで社会に一歩近づけるのではないかと。若者の自立と犬の譲渡、両方のためにカフェが良いと思いオープンさせました。(上山氏)」
カフェでは半個室制を導入してあえて来客数を制限することで、犬とお客様が関係性も築いていくことができ、犬も徐々に心を開いていく。犬の変化をお客様にも喜んでもらえる仕組みになっており、最近ではメディアの取材も多く、それを見たお客様の来店も増えている。

【考えながら動く、動きながら考える】
同社の求人に応募してくるのは20~30代の若い世代が比較的多いという。
「彼らの話を聞いていると、ベーシックインカムを稼ぐことは基盤にありますが、“たくさん稼ぎたい”という気持ちよりも“大事なものを大事にする”という思いを持った人が増えているのではないかと感じます。起業する人が増える一方、“社会のために少し良いことをしたい”という気持ち、社会の中でも自分の意味を見出したい方は増えているのではないでしょうか。(上山氏)」
今後は、もっと若者に将来のキャリア相談が出来るような仕組みが構築出来れば、夢や希望を持つ若者が増えていくと上山氏は考える。

同じような施設を立ち上げたい、殺処分を解決したい、と見学に来る人もおり、施設見学ツアーなども実施している。同社での運営資金は助成金や会費、寄付などが主だが、これらの助成金は、犬の保護活動だけでは申請できないものも多い。犬の保護活動だけでなく、人の支援だけでなく、両者をバランス良く組み合わせたビジネスモデルであり、動物介在を中心として、犬と人の両方を支援するというところが同社ならではの運営方法だといえる。
「やらないと分からないことはたくさんあります。飛び込む勇気も大切ですが、何も知らないままではいけない。考えながら動く、動きながら考えるという両輪を大事にしています。(上山氏)」

学生時代から変わっていない“人と犬を救いたい”という気持ち。今後は、犬を飼いたいと思っている人に、『保護犬から引き取る』という選択肢を啓発、促しやすい環境作りにも取り組んでいくという上山氏。保護犬と出会えるカフェが人々にとって身近でアクセスしやすい存在になれば、支援の広がりは加速するだろう。


上山 琴美/Kotomi Kamiyama
NPO法人キドックス
http://kidogs.org/

・筑波大学 人間学類 教育学 学士
・社会福祉士
・キャリアコンサルタント
・JKC愛犬飼育管理士
・麻布大学 動物介在介入プログラム(Animal-assisted intervention Program) 修了

第31回人間力大賞 (現:JCI JAPAN TOYP)総務大臣奨励賞 受賞

JCI JAPAN TOYP2020 HP:https://www.jaycee.or.jp/toyp2020/

text by キャサリン