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デジタルの民主化が始まる!テックプレイヤーが地域社会、日本を救う

2020/07/09 14:00

コロナショックで暗雲が漂う日本社会を救うための起死回生の一手はあるのか。
先進的な取り組みで脚光を浴びる実業家の夏野剛氏とJCI日本会頭石田全史の対談が実現。夏野氏はこのコロナ危機が、日本経済を持続的成長に導く最後の機会だと提言した。


リモートワークで生産性を上げるたったひとつの方法

石田全史(以下石田):新型コロナウイルス感染症が何とか収束されつつある今、日本人の「働き方」に再びフォーカスが当たっています。日本生産性本部の調査によると、コロナショックで推奨されたテレワークの導入を歓迎したビジネスパーソンは約57%に上るものの、仕事の効率が上がったと回答した人はわずか34%にとどまりました。各種調査機関の発表したデータを見ると、概ね同様の数字が出ています。インターネット黎明期から様々なサービスでイノベーションを起こしてきた夏野剛さんは、こうした傾向をどのように分析されていますか。

夏野剛(以下夏野):大企業の経営者たちと話すと、いわゆる中間管理職の立場にいる人たちがリモートワークに苦労したという声をよく聞きます。本来、各事業部の部長、課長クラスは一定の責任と権限をもって部下をリードしなければなりません。BEFOREコロナのときに大企業の多くがそこを曖昧にしてきたので、リモートに移行したときに混乱が生じたのではないでしょうか。

石田:そもそも日本の企業体質そのものに問題があり、今回のコロナショックでそれが露呈したのかもしれません。

夏野:リアルな会議で仕事を要請されても、「次の会議までにこの業務をやっておけばいいのかな」といったように、若手社員それぞれが上司の意向を察しながら職務を行ってきた風土がいつの間にか日本の企業に根付いてしまった。ところがリモートになると、本部長、部長、課長とレイヤーごとに業務を細分化し、最終的には部下に「来週の月曜日までにこの仕事を終わらせてほしい」と指示を出し、ちゃんと期限を決める必要があります。リモートでは社員一人ひとりのタスクを明確にしないと、組織はうまく機能しません。でも、こうした課題は、経営者を含めた役職者のマインドセットですぐに解決できると僕は思っています。

石田:夏野さんが代表を務めるドワンゴでは、政府が緊急事態宣言を発令する一カ月半も前から全社員がリモートワークに切り替えました。もともと柔軟な働き方に定評があるドワンゴだからこそ、決断に迷いがなかったのでしょうか。

夏野:テレワークに切り替えて3カ月が経ちましたが、当社の場合は生産性が上がりました。業務にさほど支障がないことは確信していましたが、それでも新たな発見があったのも事実です。一番大きな利点は社員が時間を極めて有効に使えるようになったことです。

石田:社員の方々は、コロナショックのときでもモチベーションを落とさなかったのですね。

夏野:まず、通勤がなくなったことで、出社前の準備や、帰宅後に身体をケアする必要がなくなりました。こうした時間を合算すると、会社に行って帰ってきて、2時間半くらいを浪費していたのです。リモートにすると、仮に9時からミーティングを始める場合、8時半に起床してもすぐに準備できます。自分のために使える時間を大幅に確保できるようになったことで心身が充実し、パフォーマンスも上がったのです。リモートのほうが仕事の効率も上がると、ほとんどの社員が話してくれました。

石田:上司から部下への仕事のオーダーが明瞭になると、社員の自律性が向上します。生産性を上げるカギはそのあたりにありそうです。

夏野:会社にとっても有意義でした。面白いことにリモートで会議をすると、議論が白熱するのです。オンラインだと会議の空気が読めないので、僕や経営陣、上司の顔色をうかがうこともなく、みんなが自分の意見を堂々と主張します。本来、会議というのは多様な考えを吸い上げるために行うものです。それぞれが自分の意見を主張すると多少の摩擦が生じます。

実はこの摩擦が議論を深めるのです。別の社員の反論に対しては、データを提示したり、知恵を絞ったりしながら相手を説得しなければなりません。この繰り返しがイノベーションの源泉になるのです。そういう現象が会議の中で頻繁に起こるようになった。会議を意思決定の場として十分に機能させるには、リモートに限ると今では思っています。

石田:私の場合、今年2月から47都道府県を巡り、メンバーと交流する予定だったのですが、コロナの影響でそれができなくなりました。そこでJCI日本でもリモートに切り替え、全国の理事長とミーティングを始めました。さらに会議では事前にスプレッドシートを用意しアジェンダを明確にしておくと、オンラインの会議の時間が大幅に短縮されました。今、考えるとZoomでも十分、実りのある会議ができていたのだと実感しています。

夏野:先日、アメリカの企業とオンライン会談する機会がありました。日本の皆さんは、コロナ禍でいち早く革新的な取り組みを行った企業としてドワンゴを評価してくれるのですが、実は、こうした働き方はアメリカではごく当たり前です。その会談に参加したアメリカ企業の社員が8人くらいいたのですが、本国に住んでいるのは4人だけでした。残りはインドとか、シンガポールといった国に滞在していたのです。アメリカに限らずほとんどの国がコロナ以前からオンラインでミーティングを行っています。日本企業だけがリアルな場に人を集めて会議をすることに意義を感じているのです。


Text by Hiroshi Shinohara | Photographs by Masahiro Miki