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Riccardo Mayer / Shutterstock.com

企業や地方自治体がSDGsに取り組む理由

2019/01/07 13:00

─元国連の田瀬和夫氏が語る、SDGsのビジネス的意義とは?

私は、2004年から14年まで国際連合に勤務し、コロンビアのゲリラ支配地域に住む先住民の保護やレバノンでクラスタ爆弾の処理といった人道支援を行ってきました。前職である外務省にいたころから、自身のキャリアゴールを「平和」としていたんです。

当時はMDGsが設定されていた時期でしたが、国連や政府といった公的機関が行う人道支援とビジネスは現場レベルでは結びついていませんでした。そのため、例えば国連が発展途上国で農業支援や生産性支援プロジェクトを行っても、国連が引き上げた後はビジネスが成り立たず、以前の状況に戻ってしまうということが散見されていたのです。また、支援を行ってもより経済格差や情報格差が広がってしまうという現実がありました。

そのため、ビジネスとSDGsをつなげる必要がある、という問題意識をもつようになり、現在は企業向けにSDGsの実装に向けたコンサルティングを行っています。

今、欧米の経営者を中心にSDGsやESG投資は当たり前のものとして考えられるようになっています。再生エネルギーやEVシフトといった市場は何兆ドル規模ですし、CO2排出量規制やコーポレート・ガバナンスなど、各国でSDGsベースのルールが次々と生み出されています。それに付随して、企業としてSDGsやESG投資に適応しなければ、自社の長期株は買われなくなり、時価総額が下がったり資本調達コストが上がるといったビジネス上の不利益が出てくるようになったのです。

日本の企業にSDGsがもたらしたもの

こうした状況を受けて、すでに日本でもいくつかの企業が積極的にSDGsへの取り組みを始めています。例えば、私がお手伝いさせていただいているリクルートホールディングスでは、自社の価値創造モデルの中にSDGsドミノを組み込むようになっています。簡単に説明をすると、リクルートでは人材紹介やメディアといった様々なサービスを展開していますが、すべてに共通するのは「機会を求めている人と機会を提供する人をつなぐ」ということ。 そして、これはSDGsに掲げられた「人や国の不平等をなくそう」という目標と合致するものです。この目標をレバレッジポイントとすることで、多様性の尊重や働き方の進化、機会格差の解消を促進し、それらの取り組みを自社の貨幣価値に反映させようと動き始めています。

ほかにもパーティション製造で国内トップシェアを誇る石川県のコマニーは、自社のコア・コンピテンシー(核となる技術や能力)をSDGs目標の「産業と技術革新の基盤をつくろう」に設定し、その水準を世界一にまで高めたいと考えています。そして、このSDGs目標に合致した自社の事業に投資を行うことで、労働環境の改善や技術発展、従業員たちの生活の質を高めることが可能となる価値創造モデルを打ち出すようになっているのです。コマニーは現在、石川県では就職人気ランキング上位の企業で、全国的な知名度も獲得してきています。

こうしたSDGsを組み込んだ価値創造モデルは、取締役会に何回 も上げて社長決裁の下で決定をしています。というのも、まず社長を含 めた経営陣がSDGsの重要性やその意義、そしてそれに紐づいた自 社の強みや社会的な存在意義を理解しておく必要があるからです。コマ ニーでは、自社が掲げるSDGs目標に合致しているかどうかを、投資判断の指標としても採用していま すし、この価値創造モデルからKPI(重要業績評価指標)を設定 しています。これはつまり、経営がブレなくなる、ということです。

文=田瀬 和夫