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コロナショックの出口戦略と経済への処方箋

2020/05/16 13:00

現在、コロナ禍における緊急事態宣言で8割の接触の自粛が要請されている。しかし、潜伏期間が長く、無症状患者が多い新型コロナウイルスの性質上、クラスター対策では宣言を解除すれば再度感染爆発が起こり、自粛に戻らざるを得ない可能性があり、長期化による経済破綻の危険性が高いといえる。そこで、「接触機会8割減」ではなく「感染機会8割減」という集中防御戦略を提唱している藤井聡氏(京都大学レジリエンス実践ユニット長)に公益社団法人 日本青年会議所(以下JCI日本)の会頭 石田全史氏をはじめ、JCI日本メンバーが取材を行った。


【第1部 藤井氏 × 石田氏 取材対談】

―石田氏:本日は宜しくお願いいたします。大変な状況の中、お時間をいただきありがとうございます。緊急事態宣言が発令されて1ヶ月。対象は全国に及んでいます。この政策により、果たして新型コロナウイルスを封じ込めることが出来るのか。現在の政府の緊急事態宣言と緊急経済対策の有効性と問題点について、お考えをお聞かせください。

―藤井氏:まず、「新型コロナウイルスに対する封じ込めというものが、何を意味しているのか?」という最終的なイメージが政府、専門家、国民の間でコンセンサスをとれていないという問題があります。新型コロナウイルスを封じ込める方法としては3つしかありません。
一つ目の方法は、専門家会議から提唱されているクラスター対策ですが、新型コロナウイルスを駆逐、あるいは撲滅する方法です。国民の多くもこの方法をイメージしているのではないでしょうか。「この自粛を頑張ったら新型コロナウイルスはいなくなるだろう。」と。
二つ目の方法は、効果のある薬、ワクチンが開発されるということです。これもイメージしている国民が多いのではないかと思います。薬、ワクチンが広まることで感染症が怖くなくなり、普通の生活に戻れるというものです。
三つ目の方法が、疫学的にいわれる集団免疫です。一定数の国民が感染し各々が抗体をつけることで薬がなくても感染することが無くなるということです。しかし、集団免疫については、感染していく過程で死亡者が出ることを恐れている方が多く、この方法は否定的に捉えられています。
したがって、薬、ワクチンの開発を待つかクラスター対策を続けていくかという2つに絞られています。
しかし、薬、ワクチンについては、いつ開発されるかはっきりとは分かりません。現在効果があるといわれている薬についても、薬の効能として症状が改善するのか、副作用があるではないかといった点で確証は得られていません。ワクチンとなると、早くて2年、長いと4~8年、下手すれば完成さえしないという可能性があります。薬に頼る方法は先行きが不透明です。
では、クラスター対策を行っていくのかというと、これも非常に困難です。無症状感染者が多く、クラスター班に捕捉されていない方も多く出ています。先日大阪市立大学が無作為抽出による抗体保有者を調べたところ、1%が抗体を持っている、つまり過去に感染していたということが判明しています。これは感染前後のデータを採った信用性のある唯一のデータです。大阪都市圏で1000万人の人口があるとすれば、過去に抗体ができる状態まで感染していた人が10万人いるということになり、これはクラスター班で対応できる数ではありません。クラスター対策では、感染者が見つかれば隔離し、その濃厚接触者を見つけて検査をし、感染していたら隔離するということを繰り返して一人残らず隔離していくこととなりますが、新型コロナウイルスはエボラ出血熱やSARSのように毒性が強くないために無症状感染者が多く、感染者全てを捕捉する方法は現実的ではありません。
それならば、薬、ワクチンの開発を待つか集団免疫を得るかと2つしか方法はありません。そこで集団免疫では人が亡くなるからと否定すれば、残る方法は薬、ワクチンの開発を待ち、下手をすれば長くて7~8年間も行動制限がかけられた状況を許容するのかということになります。したがって、新型コロナウイルスを封じ込める方法論としては、集団免疫を得ることしかありません。

―石田氏:政府の緊急事態宣言では新型コロナウイルスの封じ込めや経済破綻を防ぐことができないとした場合、いかなる方策によって新型コロナウイルスを封じ込め、経済破綻を防ぐことが出来るのでしょうか。「接触機会8割減」から「感染機会8割減」への移行という集中防御戦略について、見解をお聞かせください。

―藤井氏:現在日本は感染症対策のために専門家会議を設置してはいますが、ガバナンスが存在していない状態です。各国では感染症対策に何かしらのガバナンスがありますが、日本は行き当たりばったりでとても感染症対策をする姿勢には見えません。今はこの対策の指揮を取る方が必要です。
私たち京都大学レジリエンス実践ユニットではこの事態における指揮系統、対応策を打ち出しているユニットであり、「医療崩壊は可能な限り防ぎ、死者を可能な限り少なく、経済も可能な限り回す。」というビジョンを明確に打ち出しています。それが「感染機会8割減」の考え方です。「接触機会8割減」は「感染機会8割減」のビジョンに入っています。会わなかったらもちろん感染しませんが、会っても感染しない方法を知ることで、感染者が爆発的に増えることはありません。会うことが出来れば、経済も動き、倒産や失業を最小化することが出来ます。これが「接触機会」と「感染機会」の違いです。

―石田氏:「感染機会の8割減」とは具体的にどのようなことをすれば良いのでしょうか。

ー藤井氏:まずは宴会とカラオケの自粛または禁止です。飛沫が飛ぶ上に、食事に付着するからです。これらを自粛・禁止することで多くの感染機会を減らすことができます。禁止したうえでこれらの事業者に対しては休業補償を出すことが適切かと考えます。営業をするのであれば、十分な換気をしたうえで、店員と客の間にアクリル板をおいて客同士を間仕切りする、店員がフェイスガードをするなどの高い基準を課すしかありません。ライブハウスは換気をしっかり行い、飲食をしなければ大丈夫です。
次に換気です。どこにいっても換気を意識しましょう。レストランやバス、電車、家庭でも出来るだけ換気する。新型コロナウイルスにおける空気感染とは、空気に漂っている水蒸気にウイルスがつき、肺に入る仕組みになっています。ライブハウス、スポーツジムで広がっている原因はこの空気感染です。しっかり換気を行うことで空気感染のリスクを減らすことが出来ます。
最後に目、鼻、口を触らないということです。新型コロナウイルスの感染ルートは空気感染と接触感染です。接触感染は目、鼻、口にウイルスが付着することで感染するので、仮に手にウイルスが付着していたとしても目、鼻、口を触らなければ接触感染を防ぐことが出来ます。
政府が出している感染防止の方法には過剰な注意も書かれていますが、私たちはこの3つに注意していれば感染のリスクはゼロに近づき、経済活動を再開しても問題がないと考えています。

―石田氏:京都大学レジリエンス実践ユニットでは、疫学の専門家が入っていらっしゃるとのことですが、現在のクラスター対策の視点では、新型コロナウイルスを封じ込めることは出来ない、逆に、ご提唱の政策であれば、新型コロナウイルスに抗することは出来るということでしょうか。

―藤井氏:専門家会議はクラスターに固執し過ぎではないでしょうか。東京都で感染者を10名以下にしたいと言っていますが難しいでしょう。感染を防ぐ方法を3つ申し上げましたが、まずはその方法で「感染8割減」を目指すべきです。その上で、コロナ弱者を守ることが欠かせません。コロナ弱者とは、高齢者、基礎疾患をお持ちの方、妊婦、乳幼児です。日本の人口でいうと約6割がコロナ弱者といえます。そういった方たちの外出を8割減らすことは大事です。
皆さんの家族でインフルインザに罹った人がいたら、努力して罹らないように行動すると思います。新型コロナウイルスも注意して行動すれば家庭内感染も防ぐことが出来ます。
また、我々が感染しているという前提でコロナ弱者と接することで感染は減ります。コロナ弱者の感染さえ防げば、重傷者、死亡数が激減し、医療崩壊も防ぐことが可能です。
もう一点重要なことは、感染地域と非感染地域の移動を遮断することです。中国から日本に広まったことと同じ状況になりかねません。非感染地域をロックダウンして守るということです。
非感染地域で経済活動が活性化することで、感染地域で拡大したとしても経済は回ります。感染者数は減ることはもちろん良いことですし、上がったとしても集団免疫は上がっていくので悪い状況にはならないでしょう。

―石田氏:経済政策において、どの様な支援、保証が必要であり、どの様な問題点があるのかお聞かせください。

―藤井氏:現在、準ロックダウンの状況でキャッシュフローが止まっています。その部分に強制的に注入していくべきです。注入することで労働者の賃金に回し、家賃の支払いも出来る。適切な注入としては、粗利の損失分を全額政府が補償することができれば理想です。それぞれの所得も下がらず、会社も潰れず、雇用も守られます。粗利の損失分の中には、家賃、賃金、給付分が含まれています。生産性が下がっているため、お金をもらっても物が作れないため、物価も上がっています。それを食い止めるためには、消費税凍結をするべきです。下がっていく実質GDPを上げる効果もあります。ここまでできれば、日本経済を維持することができますが、この準ロックダウン状態では生産性が低下することで技術の毀損、物資の不足は発生するので、GDPの30%といわれる食糧、衣料といった生活必需品については経済を回していかなければなりません。これによってある程度の失業者、自殺者を防ぐことになると考えられます。
今、政府は自粛要請をしますが、補償がセットになっていません。3月当初予算の段階などもっと早い段階で予算を組みなおすことや補正予算を議論していれば色々な対策をいま実施することが可能でした。平常時の予算執行プロセスを続けた結果です。アメリカやドイツは多くの努力をしていますが、それでも失業者が増えています。日本もこのままでは大変なことになります。共同通信のアンケート調査によると、日本の中小企業は5月末までの休業で4割、6月末までの休業で6割が耐えられないという結果が出ています。手持ち資金が枯渇するので倒産する企業がそれだけ出てくるということです。政府による融資案だけという方針は、企業側としては復活できる保証もなく、復活できないときには借金だけが残ることになるので対応を変えるべきです。政府が家賃、賃金を最低限として補償をするだけでも企業を守れるのではないでしょうか。また、融資についても無利子・無担保で出しているが、私は無期限劣後ローンが良いと考えます。黒字にならない限り返済しなくてもよい融資制度です。政府は給付を基本として、融資は無期限劣後ローンとしていくべきです。また、法人税も延納ではなく完全減免にするべきです。公共料金の全額または半額負担し、固定経費を出来るだけ国で負担することが重要です。

―石田氏:無期限劣後ローンは大変興味深いです。今、全国のメンバーの声をきいていても企業は収入が減少し、固定費がかかって負担となっています。東日本大震災時は政府が主導をとって既存の借入について猶予等を行っていましたが、今回はないことが課題だと思われますがご意見をお聞かせください。

―藤井氏:徳政令や返済延期について議論していく必要はあると思います。しかし、延期されることで困る人もでてくるので、政府が補償した方が良いです。粗利の補償をすることで支払いを伸ばす必要がなくなるので、そちらを優先するべきです。

―石田氏:新型コロナウイルス感染拡大により企業は大きな打撃を受けています。今、企業、個人事業主が取り組むべきこと、または今後顕在化する危機への対策として、どのようなことに取り組むべきでしょうか。

―藤井氏:今は本当に苦しい状況かと思います。政府が補償し、都市を開く状況を作るべきです。多くの都道府県は徐々に再開してくことになりましたが、特定警戒都道府県(13都道府県)の一部は今日時点で緊急事態宣言が継続されている状況です。ITの活用も全体からみれば一部のことであり、別の方法を考えていかなければなりません。
今後重要なことは、13都道府県以外の中小企業は感染症対策を万全にしたうえで、業態を工夫していかなければいけません。新型コロナウイルスが収束したとしても消費税が10%のままでは景気の冷え込みは続くでしょう。
中小企業の皆さんは、粗利分の損失補償について、声をあげるべきです。個々人が頑張っても限界があります。

―石田氏:ワクチンが開発されるまではコロナウイルスとの共生期間になるが、経済活動を進めていくためのガイドラインを作成したいと思っていますが、ご意見を聞かせていただけますか。

―藤井氏:京都大学レジリエンス実践ユニットが提唱している5つの対策を軸に作られたらいいかと思います。専門家会議の感染症対策では過剰であり、三密を避ける必要はありません。本当に感染を広げたくないならば、1年間誰とも会わずに放っておいていいわけですが、人としての愛がある感染症対策をやっていくことを考えるべきです。
家族においては、他人は立ち入ることは出来ません。家にいましょうというのは、家族感染を許しているのと一緒です。賢く新型コロナウイルスと付き合い、感染を最小化することではなく、新型コロナウイルスによるあらゆる意味での被害を最小化するような付きあいをするべきです。

―石田氏:新型コロナウイルス感染終息後は、経済のV字回復が求められます。大打撃を受けている飲食業、インバウンド産業だけではなく、建設業などでは今回の大きな財政出動によって、公共事業の縮小も懸念されています。コロナ終息後の日本経済回復のためには、いかなる政策が必要だとお考えでしょうか。またどの程度の規模、どれくらいの期間の財政出動が必要だとお考えでしょうか。

―藤井氏:まずはV字の谷部分をいかに浅くするかを考えるべきです。谷が浅ければ回復の上り坂も浅くなります。だからV字回復の方法を考える前に、いかに谷を浅くするかといった提言をしていく段階です。
経済を活性化させ、地方から日本経済を引っ張っていなかければいけませんので、地方での財政出動はするべきです。地方が引っ張るなら公共事業しかありませんので、高速道路のミッシングリンクの解消や防災のための堤防事業などを実施し、地方都市を活性化することが重要です。地方が活性化して分散化することはパンデミック対策としても有用であり、地方への投資が必要であるという声をあげていくことが重要です。残念ながら117兆円の経済対策には入っていませんが、これをいち早くいれるようにしておかないとV字回復は望めません。
今回は東京一極集中が問題です。地方に分散化していけば首都圏でも感染爆発は起こらなかったはずです。都市に一極集中した場合、感染被害は拡大しやすく、ロックダウンしたときには経済状況が一層悪くなります。パンデミック対策の観点からも東京一極集中を改善していかなければなりません。
インバウンドについては、しばらくの期間は難しいでしょう。これを機にインバウンドの構造計画を考え、内需主導の経済に転換していかなければならないでしょう。

―石田氏:どうもありがとうございます。ここからはメンバーからの質問をご紹介させていただきます。

【第2部 JCI日本メンバーによる質疑】

―都道府県ごとの移動自粛が解除になるタイミングや要素はどのようにお考えでしょうか。(39歳・男性)

―藤井氏:感染格差がなくなった時です。地域によって感染格差がある場合、感染者が少ない地域であっても、感染者が多い地域の人が行き来をすることで感染者が増える確立が高くなるため、控えるべきです。感染格差が同じであれば問題はないです。しかし、感染格差がなくなることはないので、関東では東京都とそれ以外、関西では大阪府とそれ以外というのが最後まで残るのではないかと思います。但し、首都圏においても感染機会の防止策を徹底していたら感染はしないので東京へ行っても大丈夫です。

―2~5歳までの子どもが在籍している幼稚園に自分の子どもを通わせています。通園の自粛をした方が良いのでしょうか。(40歳・女性)

ー藤井氏:0~1歳児は危険と言われていますが、小学生以下はほぼ感染せず、幼稚園児でいま亡くなっている子どもはいません。対策をふまえれば、基本的に大丈夫でしょう。

―今の政策は無症状感染者=見えない敵に対する過度の臆病さを感じます。ピンポイントとなってくる注意をしていけばいいと思いますが、いかがでしょうか。(39歳・男性)

―藤井氏:まずは全員が自分を感染者だと思い、目の前にいる人も感染者だと意識しましょう。そして、常に手に新型コロナウイルスが付いている、空気には新型コロナウイルスがあると思うことです。そのようにイメージすることで、感染機会を避ける行動がとれるようになります。
インフルエンザのように本当の意味で空気感染するようなウイルスの場合は防ぐことは出来ませんが、新型コロナウイルスは空気でそこまで広がらないので換気していれば大丈夫です。今の政府は新型コロナウイルスが何者か分からずに対処している気がします。新型コロナウイルスがどのように感染していくのかということをイメージしてください。

―アンケートを実施したところ、子どもの教育面で影響が出ています。今考えうる個人への支援を教えてください。(37歳・男性)

―藤井氏:個人への支援としては粗利補償をしないのではあれば、10万円の給付をあと何度か実施する必要があるでしょう。個人への一番の支援は消費税凍結です。消費税が凍結されれば、消費税分実質賃金が上がることになるので有益な方法でしょう。
話題になっている9月入学については、仮に9月にスタートしたとしても秋口に新型コロナウイルスの第2波が来る可能性もあり、また休校するのかという話しにもなるので、夏には再開するべきだと考えます。
緊急事態下のスウェーデンでも子どもは感染、死亡が少ないからと小学校、中学校は開校しています。日本もインフルエンザと同じ対策をして学校の再開をしたらいいのではないでしょうか。そして高齢者同居世帯についてはサービス付き高齢者住宅などを拡充してケアするといった高齢者対策をとっていけばいいでしょう。

―新型コロナウイルス感染拡大終息後のV字回復において、消費税減税が必要だとお考えですが、どの程度の期間、何%の減税が必要とお考えですか。(35歳・男性)

―藤井氏:自粛中は消費税を0%にまで減税すべきです。それにともなうレジやシステムの対応に掛かる費用は国が補填するべきです。新型コロナウイルスの完全終息からV字回復することが出来たら段階的に上げて、経済状況が悪くなればそれ以上は上げないように調整していくことが良いでしょう。

―PCR検査の陽性者は症状が出ている人、出ていない人がいますが、症状が出ている重症患者のみ病院で入院とすれば病床数は間に合うのではないでしょうか。(40歳・男性)

ー藤井氏:4月中旬からようやく軽症者はホテルに移動させています。とはいえ、ホテル等での受け入れをやっていないところもあるので、そのやり方が広がってくれば医療に余裕が出てくると思います。

―アンケートで個人からは抗体検査の拡充について意見が多かったですが、どのように進めるべきとお考えでしょうか。(34歳・男性)

ー藤井氏:抗体については期待するところが大きいですが、まだ情報は不十分なので研究をすすめていくことが大事です。新型コロナウイルスは風邪と同じですので何回もかかる可能性はあります。研究が進むことで抗体があったらどれぐらい安全かということも分かるので、社会活動を行っていくことも可能となってきます。

―PCR検査において、日本は遅れ気味なイメージがありますが、いかがでしょうか。(36歳・男性)

―藤井氏:今まで政府は、クラスター分析に固執するあまりPCRをずっと抑制してきたという経緯があります。一方で、一般論として言うとPCR検査を含めた研究全体も低迷しており、これが、対策の遅れを導いています。研究費削減によりコロナウイルスを専門に研究している人自体がいなかったわけです。デフレと緊縮財政のために研究費が削減され、科学技術論文も減り続けています。公的な研究所も緊縮財政で潰されており、日本の研究力は下がっていく一方なので、これを改善しなければなりません。

―新型コロナウイルス感染拡大の中、大きな災害が起きたら、今までの対応では問題は出てくるのではないでしょうか。今の状況だからこそ気をつけなければいけないことをお聞かせください。(40歳・男性)

―藤井氏:避難所が非常に危険な三密状況になりますので、これを機会に避難所の在り方も抜本的に変えていく必要があります。日本の避難所については、シリアの難民キャンプより劣悪だという国連指摘もあります。海外では一戸建てプレハブを建てて住まわせるような対応もしていますから日本においても基本的人権が保障されるような避難所となるように予算を拡充しておくことが政府には必要です。避難所へ行く必要が無いように耐震補強しておくことが理想ではありますが、日々災害が起きたときにどこへ避難するかなどシミュレーションをしておくことが国民には必要です。

―今回、都道府県が力を持ち出して、ようやく動き出しましたが、平常時にどのような組織をつくっておけば良かったのか、考えをお聞かせください。(39歳・男性)

―藤井氏:日本には感染症法がありますが、感染症対策は自治体が行うと記載されているので知事がおこなっています。しかし、本来は国が全国で感染症対策を行うという権限を定めておくべきでした。

―世界的にも経済の影響があるなかで戦争やテロがあった場合、日本の防衛体制はどうでしょうか?(40歳・男性)

―藤井氏:大変に厳しいでしょう。文字通り有事となってしまえば、防衛するのは今のままなら無理でしょうね。滅茶苦茶にされて終わりです。経済を立て直してGDPを上げ、自衛力も強くし、アメリカとの対等性も幾分回復させつつ、中国に対抗できる状況にしておかなければアメリカ、中国の属国となっていきます。

―石田氏:本日はありがとうございました。本日の対談をもとに、一日も早く経済活動を段階的に再開する提言を作成していきたいと考えております。
日本はインバウンドではなく、内需を拡充していく時期になったのではないかと思います。
そして、このような局面においては、政府のお金の使い方は、国民を救うための経費という視点ではなく、国民が生き生きと暮らしていけるための投資という視点をもってもらうことが必要だと考え、提言にまとめてまいります。






◆藤井聡 / Satoshi Fujii
1968年生まれ。社会工学者。京都大学大学院工学研究科都市社会工学専攻教授、同大学レジリエンス実践ユニット長、統計数理研究所リスク解析戦略研究センター客員教授、早稲田大学意思決定研究所招聘研究員、京都大学地域連携教育研究推進ユニット教授、内閣官房国土強靭化推進室ナショナル・レジリエンス懇談会座長、一般社団法人日本モビリティ・マネジメント会議理事長、京都大学土木会評議員、カールスタッド大学客員教授。過去には第2次安倍内閣において内閣官房参与を務めた。趣味レーションならびに行動経済学のテーマで博士(工学)を取得した後、心理学科や経済産業研究所、学際ユニットでの諸研究等、「実践的総合政策論および人文社会科学研究」が専門。

◆石田全史 / Masafumi Ishida
1980年福島県生まれ。中央学院大学卒業。双葉不動産代表取締役。04年JCI浪江入会、12年同理事長、15年JCI日本国際協力関係委員会委員長、16年同福島ブロック協議会会長、17年同東北地区担当常任理事、18年同専務理事、19年同副会頭を経て、20年に同第69代会頭就任。