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サケの稚魚放流事業

サケの放流に込められた、ある想い|群馬県

2018/03/15 13:00

吉本興業が2011年にスタートした全国47都道府県「あなたの街に住みますプロジェクト」。ここでは、お笑い芸人たちがJCの事業の神髄を探り、それを明日の地域おこしにつなげようとする。

「ちゃんと帰ってきてね」

水面を泳ぐ小さな魚を見ながら、男の子は声を震わせていた―。 この3月に群馬県高崎市で行われた「サケの稚魚放流」である。主催したのは高崎JC。市内を流れる烏川を、サケが遡上するきれいな川に戻す運動として1988年から始まり、今年で31回目を迎えるLOMの看板事業だ。 毎年12月、市内の幼稚園児や小学生などを対象に、6万粒のサケの卵を配布するという。1人あたり5粒が行き渡る計算だ。子供たちはそれを家庭でふ化させ、稚魚に育て、3カ月後のこの日、一斉に川に放つのである。田島圭次郎理事長は狙いをこう説明する。

「命の〝共育〟をテーマに取り組んでいます。ふ化したサケを愛でること、それでも死んでしまったサケを悲しむこと、そして生き残ったサケとの別れを惜しむこと。そうした子供が抱く感情を尊重することが大事。命の尊さを学ぶ機会になればと考えています」 そんな子供たちが暮らす高崎は、しかし一方で、近年、駅前の再開発が進み、古き良きまちは変わりつつある。それに危機感を募らせるのはJCだけではない。住みます芸人も同じだ。アンカンミンカンの富所哲平はこう嘆く。

「中学生のとき、地元商店街で開かれるナイトバザールが楽しみでした。夜の外出が親に許されるからです。それこそ五感をフルに使って親友探しをしたものです。ゲームセンターで麻雀に熱中していた今の相方に声をかけたのもそんなとき。楽しかった〝まちのにおい〟が深く心に刻まれたからこそ、こうして地元に戻り、大活躍しているわけですよ(笑)」 そんな富所の話を聞くと、前述のJCの試みが浮かび上がる。サケの遡上だ。海に出たサケは、「におい」の記憶などを頼りに、およそ3年半を経て生まれ故郷の川に戻ってくる。つまり、リアルな体験でしか得られない「におい」というのは、家族愛や郷土愛の源泉となり、地域おこしの起爆剤になるのではないか。そう問うと、田島理事長は微笑んだ。

「県外に就学や就職をし、また結婚しても、いつかは戻ってきてほしい。そんな〝親の想い〟を、子供たちはサケの放流を通して学んでくれたらうれしいですね」

田島 圭次郎◎1979年群馬県生まれ。2002年立教大学卒業。同年富士通入社。10年寿々屋入社、15年代表取締役に就任。10年高崎JC入会、16年日本JC地域再興会議副議長などを経て、18年高崎JC理事長に就任。スローガンは「温故創新 ~変わらないために変わり続ける~」。

アンカンミンカン◎ボケ担当「川島大輔」(1983年群馬県生まれ)とツッコミ担当「富所哲平」(同年同県生まれ)のコンビ。東京NSC12期生。2006年に結成し、今年で13年目。11年に群馬県住みます芸人に就任。ぐんま観光特使。FM 群馬「WAI WAI Groovin’」などに出演中。

Text by Hideyuki Kitajima|Photographs by Ryo Higuchi