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1%の「希望」が、未来の世界平和を実現する

2019/08/16 14:00

女優として、ひとりの女性として、仕事にもボランティアにも常に全力を注ぐ藤原紀香さん。その活動にどれだけの人が励まされただろう。鎌田長明会頭との対談では、わずかな希望でも、それを信じ続けることで世界は変わり始めるという意見で一致した。

鎌田長明(以下鎌田):普段私たちは、当たり前のように仕事をし、休みの日には家族と出かけたり、趣味に興じたりしています。ところが世界に目を向けると、その当たり前のことすらかなわない国のほうが圧倒的に多い。この世の中に「平和」が存在することすら知らない人々がたくさんいるのです。

SDGsには、「誰一人として取り残さない」という重要な概念があります。日本には戦争がないという意味での平和はありますが、近年、気候変動の影響で大災害に見舞われ、当たり前だった生活、家族を失ってしまった人々もいます。今だからこそ、私たちは「平和」とは何か、真正面から向き合うべきだと思うのです。

藤原紀香さんは女優を志したときから、すでに社会貢献のことを考えられていたとお聞きしています。

藤原紀香(以下藤原):1995年1月、阪神・淡路大震災発生時、私はまだデビュー前で兵庫の西宮に住んでいました。それまで生や死について真剣に考えることもなかった私は、両親や周囲の人たちにいかに甘えて生きてきたかを震災で思い知らされました。生き残った私たち若い世代が中心となり、避難所となった体育館や公民館に毛布や薬を届けにいくと、わずかな飲み水を惜しみなく配ってくれた近所でも有名な堅物のおじさんなど地域のみんながお互いを励まし、助け合っていました。

それでも喪失感、孤独感はひっきりなしに襲ってきます。避難所は凍えるほど寒く、お年寄りの皆さんの唇が青紫になっていました。そんなとき、テレビでよく見るアーティストがギター1本携えて歌いに来てくれたり、著名な俳優さんが炊き出しをするために駆けつけてくれたり、おじいちゃん、おばあちゃんの手を握りしめ、「頑張ってくださいね。みんな思っていますから。」と一人ひとりに声をかけてくれた女優さんもいました。「私たちはひとりじゃなかったんだね。忘れられていなかったんだね」と、それまで青ざめていたおばあちゃんの頬は紅潮してピンク色になっていました。

その光景を見て感じたんです。今、私が憧れている世界の人たちは単にテレビや映画や舞台に出て夢や希望を与えるだけではなく、その人がそこにいるだけで人にエネルギーを与えられる職業なんだ。彼らが志をもって行動することで多くのマスメディアが集まり大切なことも世の中に伝わるんだ、単なるきらびやかな世界だけではないのだと。

当時の私は、大学を卒業し女優になる事を夢見ていましたが、両親に反対されていました。けれど、この震災で多くの人が一瞬にして亡くなり、なぜ、私は生きているのか、生き残った者は、やるべきことがあるはずだ、と考えましたし、夢を叶え、同時に、彼らのように社会に役に立つことを当たり前のようにしていきたいと心に誓い、なんの援助もいらないから夢を追いかけさせてくださいと両親に伝え、三カ月後に上京しました。

上京後、多くのオーディションに落ち、けっして順風満帆ではありませんでしたが、ゼロから立ち上がろうとしている関西の友人たちからエネルギーをもらい、ここまでこれました。それが私の原点です。

Text by Hiroshi Shinohara | Photographs by Masahiro Miki