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経営共創基盤(IGPI)代表取締役CEO 冨山和彦

ローカルの時代、中小企業が輝く「2つの道」とは

2018/08/15 13:00

経営共創基盤(IGPI)代表取締役CEO、冨山和彦氏。外資系コンサルなどを経て、2003年に産業再生機構の設立に参画。カネボウやダイエーのほか、地域企業など計41社の事業再生を支援する。09年には政府直轄の顧問団、JAL再生タスクフォースの幹部に就任。資産査定や再生計画を策定・実行し、同社を立て直した。そんな企業再生の第一人者が説く、中小企業が輝く道。

池田祥護(以下、池田):冨山和彦さんは、産業再生機構でカネボウ再建を成功させ、機構が解散後、経営共創基盤(IGPI)を創業。企業再生のスペシャリストとして、多くの企業を立て直しました。2014年には、『なぜローカル経済から日本は甦るのか』(PHP研究所)を発表。そこでは、「グローバル企業がいくら稼いでも、日本経済全体の占有率は3割にすぎない。雇用にいたっては、2割程度である。残り7割のローカル経済圏が復活してこそ、初めて成長軌道に乗ることができる」と説き、ブレインとして地方創生ブームをけん引しました。あれから4年を経て、地方経済は今、どんな課題を抱えているのでしょうか。

冨山和彦(以下、冨山):2つの課題があると思います。1つ目は、人手不足。地方は都市部に先行して少子高齢化が進んでいるので、むしろ、高齢者向けの施設や医療、あるいは物流といった労働集約的なサービスの需要が増えている。しかし、そこに猛烈な人手不足が起きているという問題です。

2つ目は、製造業がグローバリゼーションの進展で低賃金の新興国と競争しなくてはならなくなり、結局、従業員の所得がどんどん減っているという問題です。この2つが掛け算になると結構厳しいですよね。経済は循環なので、所得が増えないと消費も盛り上がらない。そうした人口減少と所得減少という二重の収縮に、地方は直面しています。

池田:先般、政府が未来投資戦略を発表しました。冨山さんは会合の副会長として策定に携わっていますが、そこでは、第4次産業革命によって地域やコミュニティ、中小企業が変わると謳っています。

冨山:第4次産業革命は、見方を変えるとAIやIoTなどを使って、いろいろなものを自動化していこうという話だと思います。それが医療や介護の現場に広がれば、まずは人口減少の問題に対応できるかもしれません。

池田:なるほど。しかし、中小企業の経営者というのは、そうした先端技術に対しては及び腰で、なかなか取り入れようとしない傾向にある。後継者が提案しても社長は聞く耳を持たず。これでは、中小企業はますます淘汰されていくと危惧するのですが。

冨山:そうですね。実は、これは大企業も同じで、過去の成功体験が弊害となることがある。もちろん、そのなかには時代を超えて通用する真理もあります。例えば、私はパナソニックの社外取締役を務めていますが、創業者の松下幸之助さんは、偉大な経営者でした。日本で最初に週休2日制を導入するなど革新的なことを成し遂げ、それは今日においても普遍性をもっています。しかしそれも、いずれ進化の段階で古くなってしまうことですよね。

池田:その進化の段階で変化に対応するためには、先代をどう説得すればいいでしょうか。

冨山:魔法の特効薬はないと思います。JCの皆さんのような若い世代が、粘り強く働きかけていく。小さくてもいいから、「変わって良くなった」と思わせる成功例を積み重ねていけば、先代の納得感は増していくのではないでしょうか。

池田:リーダーはいかにして育つのかを考えるのですが、やはり自ら切り開いていく人財でないと伸びないですね。

冨山:結局、会社経営というのは、創意工夫し、失敗し、また立ち上がっての繰り返しです。克己心のない人は成長しません。

池田:リスクを取って失敗しても、セカンドチャンスを与えることが大事ですよね。

冨山:その通りだと思います。特に中小企業の世界ではそう。例えば、産業再生機構では、会社を倒産させてしまった経営者にも再チャレンジの場を用意したのですが、要は、どう潰れたかがポイントです。経営者としてまじめに一生懸命やって、取るべきリスクを取ろうとしたけれども、その取り方に失敗し、潰れてしまったというケースは、むしろ評価されるべきことです。



池田:貴重な経験になったと。

冨山:はい。そういう状況になると、自分の長所や短所に対し、いや応なしに向き合うことになるので、必ず次のステップでその経験が活かせるのです。そして、地域社会は彼に次のチャンスを与えることが重要となります。要するに、正しい失敗に対しては寛容な社会になっていかないと、正しい挑戦はできなくなってしまうのです。

Text by Hideyuki Kitajima|Photographs by Masahiro Miki