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人生100年時代のまちづくり

2019/07/04 15:00

 戦後日本人の寿命は延び続けている。2007年に日本で生まれた子どもは107歳まで生きる確率が50%あるとも言われている。
 100歳を超えた人口が増加する社会で、どのような社会を築いていくべきなのか。

1 増え続ける社会保障給付

 少子高齢化や人口減少が急速に進む中、社会保障費の増加や恒常化する財政赤字で日本の財政は極めて厳しい状況に置かれている。税や保険料などで賄う社会保障給付費(医療・介護・年金など)は、現在は約120兆円だが、2040年度には1.5倍の約190兆円に増加すると試算されている。これを、国内総生産(GDP)比でみると、2018年度の21.5%に対し、2040年度には約24%に増加することになる。

 

2 高齢化社会のあるべき医療介護体制~地域包括ケアシステムの構築~

 このような厳しい財政状況の中、国民の負担を大きく増やすことなく、高齢化に対応した医療介護体制を再構築していくことが現在の日本の大きな課題だ。高齢化の進展により変化していく医療介護ニーズと医療介護提供体制のミスマッチを解消することができれば、同じ負担の水準であっても、現在の医療介護とは異なる質の高いサービスを効率的に提供できることになる。

社会が高齢化したことにより、国民の医療ニーズは、壮年期の患者を対象とした急性疾患の医療から、高齢者を対象とした慢性疾患の医療に変化している。この変化に伴い、高齢化時代の医療は、病気と共存をしながらQOL(Quality of life)の維持・向上を目指す医療に変わらざるを得ないが、現在の医療介護体制は、このニーズの変化に対応した体制とはなっていない。

  この課題を解決するために国が推し進めているのが、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供されるネットワークである「地域包括ケアシステム」の構築だ。各地域で、その地域に即した形で、医療・介護、生活基盤に顔の見える関係であるネットワークを張り巡らすことで、患者の住み慣れた地域や自宅での医療、地域全体で治し、支える「地域完結型」の医療、すなわち、医療と介護さらには住まいや自立した生活の支援までが切れ目なくつながる医療を目指す。

 

3 おおた高齢者見守りネットワーク(愛称「みま~も」)

地域包括ケアシステムの大きな成功事例として知られるのが、「おおた高齢者見守りネットワーク」(愛称「みま~も」)だ。
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みま~もは、2007年、当時、東京都大田区地域包括支援センター入新井のセンター長を務めていた澤登久雄さんが、高齢者からの相談に個別に点で対応することの限界を感じ、地域の関係者が協力して面で支えるネットワークの構築を目指したことがきっかけとなり発足した。現在では、医療介護などの専門家・行政・民間企業・地域住民などが、互いに顔のみえる強固なネットワークを作り、「地域づくりセミナー」、「SOSみま~もキーホルダー」、「みま~もレストラン」、「みま~もステーション」、「協賛企業などによるミニ講座」、「元気かあさんのミマモリ食堂」、「おおもり語らいの駅」などの様々な取り組みを行い、高齢者が安心して健康な生活をすることができる環境を作っている。

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日本青年会議所は、この「みま~も」の取り組みに着目し、京都会議でのフォーラム、金沢会議での分科会、みま~も視察ツアー、全国各地でのフォーラムやセミナーを開催してきた。また、各地での「みま~も」立ち上げの支援を継続的に行っている。
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4 みま~も池田の設立

今年6月、日本青年会議所が設立を支援させて頂き、大阪府池田市にて、新たに「みま~も池田」が設立された。「みま~も池田」は、池田青年会議所が立ち上げのミーティングから参加をし、協賛団体として参加をしている点が大きな特徴だ。

みま~もは現在までに全国の9地域にのれん分けをしているが、のれんわけの唯一の条件が、「協賛企業・団体の存在」だ。澤登さんは、みま~もののれん分けについて次のように言う。「それぞれの地域で地域事情が異なるので、地域にあったやり方をすべき。だから、あえて細かい縛りはしないことにしている。ただ、協賛企業・団体の存在は、みま~もの核心部分なので、唯一、のれん分けの条件としている。」

  みま~もの取り組みは、協賛企業・団体なくしては成り立たない。青年会議所が、みま~もに協賛団体として関わることで、地域包括ケアシステムの普及促進が期待できる。

 

5 人生100年時代のまちづくり

「人生100年時代」と言われる昨今、「人生100年時代」にあった形のまちづくりが必要だ。澤登さんは言う。「私達は、地域包括ケアシステムを作ろうと思って、みま~もの取り組みをしてきたわけではない。高齢者がより幸せに暮らせるために、自分達のできることを楽しんでしてきただけ。みま~もの取り組みは、まちづくりそのものなんです。」

 みま~ものある入新井を訪れる度に、そこにいる人達の幸せそうな、元気な笑顔が強く印象に残る。「人生100年時代のまちづくり」の1つの答えが、そこにあるのかもしれない。

Text by 倉橋芳英