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皆の知らない不妊の事実 ~不妊症の今~

2019/06/29 15:00

日本の出生率は低迷が続いている。

国立成育医療研究センターで周産期・母性診療センターの副センター長をしている齊藤英和氏より現状の不妊治療について聞いた。齊藤英和氏は、産婦人科医として、長年にわたって不妊治療の最前線に立っている。齊藤氏としては初診される患者の年齢がどんどん上がっていることに危機感を抱き、大学などで加齢による妊娠力の低下や、高齢出産のリスクについての啓発活動を行っている。

「不妊」について現在の日本が抱える問題点について、齊藤英和氏と対談をおこなった。

■約三人に一人が「二人目不妊」

Q:今回「不妊」について齊藤様より話していただきますが、現在の「不妊」に対してどのような問題があるのか、またはどのような事象が起きているのかを教えていただけますか。

A:一言で「不妊」と話すと1人目というイメージが強いと思われがちですが、意外と二人目の「不妊」で悩んでいる方が多いです。これが理想の子供の数が生まれない原因(※1)の一因を担っているのではないかと考えています。私が所属している、公益財団法人1more Baby応援団で、「夫婦の出産意識調査2019」を実施しました。その結果の一部を踏まえ、「二人目不妊」について話していきましょう。

※1調査結果で「理想の子供の数は2人以上」の人は71.4%と回答実績が出ています。

 

「夫婦の出産意識調査2019」より (公益財団法人1more Baby応援団独自調査)

※この調査は既婚男女2,961名を対象に行われました。

 

では、まず最初に「二人目の壁」を感じる理由から上げてみたいと思います。「経済的な理由」82.0%、 「第一子の子育てで手一杯」48.6%、「年齢的な理由」44.5%となり、経済的負担の割合が高い一方で、子育て環境や晩婚化の影響も伺うことができる結果となりました。



次に、不妊について調査を実施したところ、「妊娠ができないことで悩まれたのは何人目か」聞いたところ35.6%の方が、二人目の妊娠で悩まれており、約三人に一人が「二人目不妊」で悩んでいることが分かりました。



また、「二人目の不妊」で悩んでいる人のうち、「一人目の子どもができればすぐ二人目もできると思っていた人」は 59.6%となり、自分の想像と現実との ギャップがあることが分かりました。

その中で、妊娠できない一番の理由を聞くと、「自身の不妊」が38.5%、続いて「セックスの機会が少なくタイミングが合わない」が25.0%となり、セックスレスも不妊の原因の大きな要因となっています。

初産年齢が高齢化する中、仕事と子育ての両立、キャリアプラン、二人目の産休・育休の取得し難さ等々、二人目の出産には多くの壁が存在しており、今後も「二人目不妊」が増えていく可能性は否定できません。

■「二人目不妊」の方々は様々な課題にも直面

Q:なるほど。初産年齢が高齢化する中、「一人目不妊」だけではなく「二人目不妊」という問題が深刻化されているのですね。「二人目不妊」という問題が出てきましたが、「二人目の不妊」に悩む方の日々の生活の不満や具体的な問題などを教えていただけますか。

A:「二人目の不妊」に悩む体験を持つ方へ、不妊治療専門クリニックについて聞いたところ「子連れで通える病院が少ない」 35.8%、「子連れで行ける時間が制限されている」32.8%、「子連れで通院した際の周囲の目が気になる」28.4%と なり、気軽に子どもを連れて病院へ行ける環境づくりへの課題が浮き彫りになりました。なお、上記三項目のいずれかを 選択した方は69.4%となり、不妊治療専門クリニックの通院に不便を感じる人が多い結果となりました。



■男性の「二人目不妊」の悩み

Q:気軽に子どもを連れて病院へ行ける環境づくりが必要不可欠ですね。続きましてパートナーに関してですが、「二人目不妊」について男性はどのように感じているのか教えていただけますか。

A:二人目の不妊に悩む男性に、妊娠できない原因を聞いたところ、「自身の不妊」と答えた方は14.7%、 「自身とパートナー両方」に原因があると答えた方は33.8%となり、妊娠できないことの原因が自身にもあると考えていることが分かりました。

「不妊」は女性の悩みというイメージが未だに強いですが、今回の調査から男性・女性双方が抱える悩みということが浮き彫りになり、男性も気軽に相談できる環境づくりが必要になります。

 

※男性不妊症の主な原因

①造精機能障害(精子形成障害):精子がたくさん作れない

②精路通過障害:精子が通れない、出てこれない

③性機能障害:性行為ができない



1980年の男女の初婚年齢は男性が27.8歳、女性が25.2歳でしたが、35年後の2015年には、男性が31.1歳、女性が29.4歳と男性では約3.5歳、女性では約4歳高齢化しています。

また、第一子出産の年齢も、1980年では男性が29.2歳、女性が26.4歳から2015年には男性が32.7歳、女性が30.7歳となり、こちらも男性で約3.5歳、女性で約4歳高齢化しています。このように35年間で3.5~4歳高齢化しています。

たかだか4歳程度かと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、侮ってはいけません。妊孕性(にんようせい)、つまり健康な児を出産できる能力は、20代後半からどんどん低下するからです。

その証拠の一つとして、図2をみてください。このグラフは女性の結婚年齢とその方の生涯不妊となる確率を検討したグラフです。

例えば20〜24歳で結婚された方が、一生をかけても子どもが持てない確率は5%です。これが25〜29歳で結婚された方だと9%と約2倍になります。



年齢が高くなると、一生をかけても児を持つことができない確率がどんどん高くなります。

しかも、このような現象は20代の後半から始まっています。

その原因は一つではなく、複数の医学的な要因が関係しています。

 

■私たちに何ができるか

Q:最後となりますが、子供をもつためのライフプランを見直すうえで何ができるのでしょうか。

A:ライフプランは個人個人で異なり、子どもを持たないという選択肢もあります。しかし、もし、人生のどこかで子どもを持つことを計画に入れているならば、子どもを持つ時期をできるだけ若い時期に設定することは、自分自身の計画を達成するために、とても大きな要因となるといえるのです。

確かに、「今は忙しくて子どもを持つことを計画できない。もう少し経てば、時間もできるし、生活の余裕もできる」と考えて、出産を先延ばしされる方もいます。ただ、その“もう少し”が経っても、やはり忙しいことは変わりない、ということも多々あります。

後ろ倒しにしたことで、子どもを持つために不妊治療のお世話になるより、忙しくても時間のやりくりをして、早めに子どもを持つことを計画したほうが、総合的に考えて良いのではないでしょうか。

最後に、晩婚化や不妊といった問題を根本的に解決していくためには、「働き方」の改善が重要になってくると思います。子供を2人、3人産み育てるためにも、20代前半から夫婦が時間的な余裕をもった生活をおくれることが必要であるし、社会全体で育児をしていくという考え方が広がっていくべきだと思います。

Text by 野々村彰文