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男女不平等社会のペナルティ|数字で読み解くSDGs

2019/05/21 15:00

2018年には、日本でも一部の医大が女子学生の入学試験の点数を減点していたニュースが話題になったが、開発途上国でも男女平等社会の実現は重要な課題のひとつである。ノーベル経済学賞を受賞したアマルティア・センが、アジアにおける女性人口の少なさや女児の乳幼児死亡率が高いことを「消えた女性たち」(Missing Women)と表現したことで、国際的に大きな反響を呼んだことは記憶に新しい。

しかし、男女平等社会の実現が、なぜSDGsのひとつと定められているのか、直感的によく理解できない読者もいるのではないか。教育や公衆衛生、環境などでは、その問題を解決することで国の発展がもたらされるというのは理解できるが、男女平等を実現したからといって社会が発展するものだろうか。むしろ、十分に発展した社会で、男女平等が達成されただけなのではないか。

近年の研究は、この問いに明確に答えている。社会が発展したから男女平等が実現されたのではなく、男女平等を実現したから社会が発展したことが明らかになってきたのである。多くの研究が、開発途上国における教育の男女不平等が高い出生率と乳児死亡率の原因となり、経済成長率が低くなり、次の世代に教育の男女不平等が継承されて、貧困の罠に陥る悪循環が生じていることを示している。つまり、女子への教育は、単に本人の教育水準を高めるだけでなく、次世代の子供たちの教育水準を高めるという外部性を持つ。

より最近の研究による推計では、サブサハラアフリカ、南アジア、中東・北アフリカの地域で1960年代に男女の教育水準が同程度であったならば、年当たりの経済成長率は最大で0.9%高かったであろうことが示されている。つまり、女子の教育上の不平等の存在は、当事者である女子の権利や機会の逸失にとどまらず、国全体が経済成長スピードの鈍化というペナルティを支払うことになる。かつてインドのケララ州政府が女子校の建設や女性の教員の育成などを通じて、女子教育に積極的に投資を行った結果、ケララ州の乳児死亡率が低下し、一人当たり所得が上昇し、女性のみならず男性の平均寿命が延びたことが示され、「ケララモデル」として知られるようになった。

女子教育に積極的に投資をすることで利益を享受している地域は既に存在している。開発途上国のみならず、我が国においても、教育や職業の選択において、女性を不当に扱われない社会をつくり上げていくことが急務である。

文=中室 牧子