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発展途上国の「貧困」を把握する最新の方法|数字で読み解くSDGs

2019/03/18 15:00

貧困削減の第一歩は、貧困地域やその状況を正確に把握することから始まる。しかし、開発途上国では、国内における経済活動を把握するための統計作成に振り分けるだけの十分な財源や人材が不足している。貧困地域で調査を行うには、治安の悪い地域を長時間移動しなければならないなどの問題があり、データ収集にかかるコストも高くなる傾向がある。

このため、GDPなどの統計は一応公表されてはいても、不正確であるとの指摘を受けてきた。世界銀行によると、2000年から10年までの10年間に、国全体で経済活動を把握することができるような統計をひとつも発表しなかった(というよりはできなかった)アフリカ諸国は、59カ国中14カ国に上る。これではSDGsの進捗や達成度合いをモニターしていくことなど、到底不可能だろう。

しかし、近年、伝統的な統計以外に人々の経済活動を把握する新たな方法が提案されている。それが人工衛星画像を用いるというものだ。すでに先進国では商業化され、急速に広がりを見せている。例えば、18年に巨額の資金調達で話題を集めたベンチャー企業のひとつであるオービタル・インサイト社は、衛星画像で大手スーパーマーケットであるウォルマートの駐車場に止まっている車の台数などから家計支出の予測をしている。これ以外にも、農耕地の衛星画像から収穫高を予測したり、未開地での溜まり水の衛星画像から蚊の発生数を予測し、マラリアやデング熱など蚊を媒介した感染症の予防に役立てるといった動きもある。

スタンフォード大学のバーク教授らは、衛星画像を用いたアフリカ諸国の経済活動の予測で優れた論文を発表している。これまで開発途上国の貧困は、夜間の光の明るさで推計されることが多く、電灯もないような最貧困地域の把握は難しいという限界があった。教授らは、夜ではなく昼間の衛星画像を用い、ディープラーニングを駆使して地域別の経済活動の予測を可能にした。そして、ナイジェリア、タンザニア、ウガンダ、マラウイ、ルワンダの5カ国について、衛星画像のデータから地域別の消費支出と資産のばらつき具合を推計、それを世界銀行が収集している統計である「生活水準計測調査」(Living Standards MeasurementStudy:LSMS)と比較したのである。

この研究によると、衛星画像から推計された消費支出と資産のばらつき具合は、最大で75%も世界銀行の統計と一致することが明らかになった。今後は、開発途上国の貧困を把握する方法として、調査員による聞き取りや質問紙調査といった伝統的な統計に代わり、衛星画像を用いて経済活動の把握が主流になっていくだろう。

文=中室 牧子